過ぎ去りし麗しき日々は再び我の元に返り来たらず

やってくるこの毎日が人生だと知っていたら

続けててよかった

 俺の仕事のひとつに"イベント"っつーのがあるんです。企画して募集して、みたいな。当日人集めてそれを上に報告して、っていうのを一年を通して何回かやる訳です。

 俺は仕事人間とは真逆の奴でして。仕事に関して正直何も思わないと言いますか、どうでもいいんです。とにかく言われた事を黙ってやってりゃいいんだろと。仕事に関して同僚から熱いこと言われても心の中でドン引きしてるような人間です。

 いろんなイベントも昔からやってるのを淡々と続けてるだけで、今回はこうでダメだったから来年はあれをああしてみよう、みたいなこともないんですね。

 自分はちっぽけな歯車のひとつでありたいし、究極の指示待ち人間だと自覚しているので、職場ではバイトの女の子にも舐められがちですが、何のプライドもないのでそれすらも何とも思いません。


 そんな俺ですが、今日は年度最後のイベントの日で。今日のイベントは『読書感想文コンクールの表彰式』でした。小学生から読書感想文を募集して審査して入賞した子を読んで表彰状を渡すんです。

 去年10月ぐらいから企画をスタートさせて、小学校に募集をかけるのが12月、子どもたちが冬休み中に書いた読書感想文を3学期が始まったら送ってもらって、低学年、中学年、高学年ごとに審査。最優秀賞など決まったら本人に通知して表彰式の案内を出すと。そんな流れ。

 基本、市内の小学生を対象にしてるんですが、その中で関西地方の小学生が個人で送ってきてくれて。募集してくれた子が少なかったのもあって、その子が奨励賞を受賞したんです。でもこんな北海道の田舎のちっぽけなイベントにわざわざ飛行機乗って来てくれる訳ないじゃないですか。「行けません。」と保護者から連絡も来なかったけど、当然欠席だよなぁと思ってました。

 そしたらお母さんとその子が表彰式に来てくれたんです!わざわざ飛行機に乗って、俺がパソコンで作った表彰状を受け取りに来てくれたんです。

 実はその子はとある障害を持っていて、学校も一般の小学校じゃなかったんです。それは審査に影響は全くしてないんだけど、一目でわかる機器を顔に装着している子でした。

 表彰式は滞りなく終わり、俺は遠方からわざわざ来てくれたお母さんとその子に一言お礼を言いたくて声をかけました。

 そしたらお母さんが涙をポロポロと流しながら俺に言うんです。「本当にありがとうございます。」と。「生まれながらにハンデがあるこの子が一般の子に並んでこんな素晴らしい賞を戴けるなんてまるで夢のようです。」と。

 もうね、泣きますよそりゃ。そんなこと言われたらさ。俺が適当にやってた仕事は人に感謝されるような仕事だったんだって。

 募集も少ねぇし来年はやめようかなぁ・・・なんて思いながらやってたけど、そんな気持ちは吹っ飛びましたね。俺は指示待ち人間ですけど、それ以上に単純な男でもあります。