過ぎ去りし麗しき日々は再び我の元に返り来たらず

やってくるこの毎日が人生だと知っていたら

父が投資詐欺の被害者になりました その6

 

 父がひた隠しにする謎の債権者Xの存在は誰なのか⁈

 F氏に会う前の車内でXが誰なのかを強い口調で問い詰めたのだが頑なに口を噤む父。誰を守っているのか?今、この状況で母と俺以外に守るべき人物が他にいるっていうのか?この後に及んでまだ自分がかわいいのか?何を言ってもダンマリを決め込む父。

 F氏に送ってもらう父を実家で待ち構えることにした。このままで良い訳がない。話をしてくれるその日まで待ち続けるのは優しさなんかでは決してない。

 それにしても隠さなくてはいけない理由は何なのだ?浮気相手か?金もないハゲジジィに100万も貸す女なんか存在するか?はたまたヤミ金に手を出したんか?良くない想像ばかりしてしまう。たった数日で何回裏切られたのか?まだあるのか?怖い。

 帰ってきた父を母と徹底的に詰めたところ、観念したのか最も簡単にXの正体をゲロった。

 

 父の妹(俺の叔母)であった。

 

 父は3兄妹(弟)なのである。実は事件発覚して叔父に連絡した時、父が叔母にも金を借りようとしていたと聞いた俺はすぐに叔母にも連絡した。

 叔母は俺に『兄に貸してと言われたけど断った。』と証言した。この事件は叔母にとっても寝耳に水の大事件だったはずで『私も100万貸した!』とつい口走ってしまいそうになるはずだが、いろいろ一瞬で理解したのだろうか叔母は黙っていたのだった。

 旦那さんに内緒にしててバレたらマズいのか、俺たち家族に返してもらうのは忍びないと思ってなのか、何にせよ叔母にしたら聞いてくれるなってことだろうから、俺と母は聞かなかったことにすることにした。

 叔母をあっぱれと思う反面、200万返さなくていいとは言わない叔父は何なのだ?もちろん借りた金は返して当然なので叔父が返さなくていいと言わない限りそりゃあ返すのだが。

 もし30年後、俺の弟が詐欺被害にあって俺が金を貸してたとして。甥っ子が『叔父さん、父が借りた金は必ず僕が返します。』と言ってきた場合、金を黙って受け取るかな?あの金はお前の親父にやったもんだから返さんでいい!って断るんじゃないだろうか?

 まぁ叔父の懐具合もわからないし、俺がどうこう考えたところで何も変わらないんだけどな。

 

 とにかく、俺は親父に金を貸した奴も親父ぐらいムカツいてるんだ!投資話をちゃんと聞いて貸したんなら同罪だし、ろくに話も聞かないでポンと貸したんならそんなヤツ友達なんかじゃねぇだろ!

 まぁ憎んでいるのは親父に借金させてまで金を引っ張り続けたクソ犯罪者だけですけども。