過ぎ去りし麗しき日々は再び我の元に返り来たらず

やってくるこの毎日が人生だと知っていたら

父が投資詐欺の被害者になりました その5

 

 土曜日、手渡しで返済を要求してきた父の友人2名に会って金を返すことになった。内訳は、S氏に200万、F氏に200万。振り込みで良いと言ってくれたO氏には週明け火曜日に振り込むことにした。月曜は建国記念日の振替休日だったからである。

 S氏と待ち合わせたのはインドアゴルフ場の駐車場であった。借金したのは皆ゴルフ仲間らしい。俺の車に乗り込んだS氏が開口一番『で、話って何?』と言ったのを聞き、父がまだ何も説明していないことを理解し絶望した。父に振込先を聞くよう言った時、聞けたのはO氏たった1人だったんじゃない。初めから聞いてなかったのだ。

 父は投資詐欺にあった事を話し始めたが、この後に及んでまだ自分をよく見せようとしたいのか、詐欺に気づいたのは自分から、みたいな説明をし始めた。違うだろ、俺と母がどんだけ詐欺だって言っても信じて疑わなかったくせに。

 父の説明を所々修正しつつ200万を返金。父より年下で昔からお世話になっていたというS氏は、最初によく話を聞かないまま200万貸したものの、父がその後も借金を要求するたびに恐ろしくなっていたようだ。でもまさかあの父が騙されるなんて、と言っていた。

 2人目、F氏とはファミレスの駐車場で待ち合わせ。ゴルフ協会の仲間同士であるF氏とは今後の引き継ぎなど積もる話もあるらしく、金返したら帰っていいと父。やはりS氏同様F氏に何も話していなかった父は経緯を手短に済ませた。たぶんS氏に説明した内容をしてまた俺に訂正されたくなかったのだろう。

 俺がF氏に借金した100万を渡すとそそくさと車を降りF氏の車に乗り込んだ。帰りはF氏に送ってもらうらしい。

 

 ここまで読んだ方で気づいた方はいるだろうか?何か金額が大きく違うことに。父はF氏に200万借りたことを黙っていた、とその3に綴ってドン引きしたが、この事実に気づいてしまった俺は更なる衝撃を受けた。

 今日になって父はF氏に借りたのは100万だと証言を変え、F氏も100万を受け取ったので言質が取れたことになる。

 という事は?

 つまり?

 父に100万を貸した人物Xの存在が浮き彫りになったのである。俺が衝撃を受けたのは父が謎の人物Xを隠しているという事実である。

 

つづく