過ぎ去りし麗しき日々は再び我の元に返り来たらず

やってくるこの毎日が人生だと知っていたら

まだ終わってない

間に挟まれる者の身になれ

 両親の話。父は少しずつだが前を見始めており、最近になって新しい仕事を探そうとしているようだが、まぁ母がそれに対し気にくわないんだと。

 父が仕事を始めようとしているのは金を返すためだから、それは悪い話じゃないとは思うんだが、母曰く『仕事探すのも人頼みで、また知人友人たちを周りにおいて簡単な仕事を和気藹々とやろうとしている。』らしく、自室で電話で話している内容が丸聞こえで楽しそうに喋ってたのがムカツいたんだそうだ。

 よーするに家族にどんだけ迷惑かけたかをもう忘れて事件前の日常に戻そうとしている節があると。

 俺も父には『いつまでもショボくれてんな。事件のことは早く忘れて金はなくても前向いて生きていくしかねぇぞ。』とは言った。でも、家族に迷惑かけたことだけは一生忘れないでくれよ!って話で。

 金稼ぐっつっても80歳ですからね。働き口があるかどうかもわからんし。だって今ファーストフード店なんかシルバーな店員さんばっかでしょ。元気な60〜70代がバンバン社会で働いてるんだから80代なんかわざわざ雇う必要ないんじゃないか?

 父が被害にあった投資詐欺、被害額が跳ね上がったのは父の人脈のせいに他ならない。自分の金だけ奪われただけならまだマシだったのだ。父の話を聞いて『それは詐欺だからやめなさい!』と忠告しないばかりかポンと金を渡してしまう阿呆が数人いたばっかりに母と俺まで大損害を被ってしまった。本当の親友なら絶対止めるし目が覚めるまで真剣に説得するはずだ。

 それなのに、また知人を通じて働き口を世話してもらっている。更にいうとその職場っていうのは、我がまちが誇る年間来場者数100万人の観光施設の有料駐車場。その観光施設は10数年前俺が働いていた職場である。父と駐車場の経営者(?)との電話がまた母の耳に入ったらしのだが、電話の相手が苗字から俺のことを覚えていたらしく、ますます声でかく話がトントン拍子に進んでいったと。

 それが許せないと母は言うのだ。自分から仕事探す訳でもなく性懲りもなくまたかつての人脈頼り。更には俺の名前まで使って上手く事を運ぼうとする。それにブチ切れている訳だ。

 何十年もそうして生きてきたんだから今になってなかなか考えを改めるのは難しいのはわかるし、使えるものは何でも使うことが恥ずかしいと思う思わないは人それぞれなので、俺はまぁしゃあないかとも思う。

 でも今、母が嫌だやめろと言ってることはやるべきではない。今すぐ離婚したいのを我慢してひとつ屋根の下に暮らして三食飯作ってくれている母をイラつかせてまで働く必要は全くないからだ。

 金を稼いで損害を補填すれば一家の大黒柱として復活できるとでも思っているのか父よ。妹と弟に返す宛のない借金をして長男としての尊厳を取り戻せると思っているのか父よ。もう無理なんだ。

 貴方にできることはもう迷惑をかけないと家族に誓って一生守って生活することだけなんだ。