過ぎ去りし麗しき日々は再び我の元に返り来たらず

やってくるこの毎日が人生だと知っていたら

父が投資詐欺の被害者になりました

 

 80近い父が投資詐欺に引っかかって老後の蓄えを根こそぎやられてしまった。まさかまさかである。

 もう金は戻ってこない。

 2日の午前中に母から電話がきて『お父さんが自室で電話しているのがドア越しに聞こえて、借金のお願いをしている内容だったので慌てて止めた。投資の配当金を出すのに150万必要だというので私の口座から下ろしてきたけど渡して大丈夫か?』というのだ。

 俺は焦った。何故なら1週間前に父から『100万貸してくれ。すぐに色つけて返すから。』と言われていたからだ。

 『貸すのはいいが何に使うのだ?』と尋ねると投資の話を始めたので『そんな詐欺みたいな話に出せるか!そんなモンに絶対手を出すな!』と一蹴したのだった。

 午後から帰って母と2人で父を問い詰めたところ『全然詐欺なんかじゃない。(金を預けたのは)ちゃんと信頼おける投資家なのだ。』という。

 父はその投資家のアシスタントを名乗る人物がいう口座に次々と金をぶっ込んだらしく結局全財産を預け、それがコレだとそのサイトを見せてきた。画面上預けた金は2倍になっていたが、この配当金を引き出すには140万振り込まなきゃいけないと言われたらしい。

 

 本当に情けなくなった。

 

 父は高卒ながらも大企業に就職し最終的には某都市の支店長まで出世した。退職後は天下り先も用意され今も非常勤で働いている。普通は誰もやりたがらないような、企業のOB団体の会長から町内会長までいろんな団体の役職を引き受けている、悪くいうと"権威に執着している老害"である。

 普段から周りに神輿として担ぎ上げられて、仕事の合間に仲間たちと夏はゴルフ冬はクロカンと精力的に活動して今なんてプロテインまで定期購入して飲んでる人なのだ。

 そうやって生きてきた人なので自分に絶対的な自信を持っており、自分が選んだ投資家が詐欺師だという現実を飲み込めず俺と母が何を言っても詐欺じゃないと言い張るのだ。

 聞くと合計で1,500万ぶち込んだと言うのだが、恐ろしかったのが自腹は900万で600万は弟(俺の叔父)と友達3人に借りたということだ。

 世間的には所謂"勝ち組"の父が全財産900万しか持ってなかったこと、こんな1秒でわかる父の与太話に4人も乗っかってきたこと、2つに大ショックを受けた。

 時系列を辿ったら、どうやら俺に金貸してと言った時は既に方々に電話かけまくって600万集めた後であった事が判明。俺がやめろと言えば終わる話ではなかったのだ。

 父の全財産がやられたのはともかく、叔父と友人に借りた600万は返さなければならない。無一文になってしまった父には返済能力がない。

 

 え、俺が返すの?

 

 つづく